心臓から送り出された血液が最初に流れる直径2.5cmほどの太い血管である大動脈が太くなり瘤(こぶ)になった状態を大動脈瘤と言います。
動脈瘤は、動脈壁の弱くなっている部分に発生し、血流によって圧力を加えられると外側に向けてふくらみます。
動脈瘤を治療しないで放置すると、破裂して大出血を起こす危険性があります。
大動脈瘤には血管の壁全体が太くなる真性大動脈瘤と、壁の内側の層が裂けて、外側の層だけが膨らんでしまう解離性大動脈瘤(別名:大動脈解離)があります。
大動脈瘤の大半は無症状です。動脈瘤が大きくなり、周囲の組織が圧迫されるようになって初めて症状が現れますが、症状が出現する頃には動脈瘤はかなり大きくなっている事が多く、無症状のまま破裂する事もあります。
症状は発生する場所によって異なります。典型的な症状は、痛み(胸や背中)、せき、喘鳴(ぜんめい)です。喀血(かっけつ)や嚥下障害(動脈瘤によって食道が圧迫され食べものを飲みこめなくなる)、しゃがれ声(動脈瘤によって喉頭へ行く神経が圧迫される)を発症することもあります。
胸部大動脈瘤が破裂すると胸や背中に激痛が起こります。心臓発作の際のように胸や腕に痛みを感じることもあります。
患者は急速にショック状態に至り、出血のため死亡します。
胸部大動脈瘤は、CT検査が普及したことから、以前よりも頻繁に見つかるようになりました。
治療には、(1)薬物療法、(2)人工血管置換術、(3)ステントグラフト内挿術などがあり、患者さんの状態に合わせてこれらを組み合わせて治療します。
血圧を下げる降圧剤を服用し、瘤にかかる力を減らします。
手術により瘤のできた血管を人工血管で置き換えて破裂を予防します。
胸部大動脈瘤の手術は、高齢の患者さんの増加、手術成績の向上とともに年々増加しています。手術は人工心肺装置を用い、脳や脊髄、腹部の重要な臓器の保護に最大限の注意を払いながら大動脈を人工血管で置換します。手術の安全性が高まったため、80歳以上の高齢の患者さんでも全身状態が良好であれば、手術をお勧めできるようになりました
金属の鋳型の付いた人工血管を瘤のできた血管の中に挿入することによって破裂を予防します。
低侵襲大動脈治療センターにおいて、腹部大動脈瘤ならびに胸部大動脈瘤に対する正確で安全なステントグラフト治療を日夜行っております。