心臓には右心房、右心室、左心房、左心室の4つの部屋があります。
全身から心臓にかえってくる血液は、まず右心房に戻り、右心房→右心室→肺→左心房→左心室と流れて、大動脈から全身へと送られます。
この流れを維持し,逆流を防止するために、心臓の4つの部屋の出口には弁がついています。
右心房、右心室、左心房、左心室の出口にはそれぞれ、三尖弁、肺動脈弁、僧帽弁、大動脈弁がついています。
これらの弁がいろいろな原因で逆流や狭窄が生じると心臓弁膜症となります。
心臓の流れに異常が発生すると、心臓は大きくなったり、心臓の筋肉が厚くなったりして代償します。
心臓には負担がかかっていますので、心臓の筋肉が障害され徐々に心臓の機能が低下していきます。
心臓の代償機構がうまくはたらいているうちは、心臓全体としてのポンプ機能は保たれ、症状も出ません。
心臓の代償機構が限界に達し、心不全を発症した時点で、肺に水がたまると動悸や息切れ、全身に水がたまると下肢のむくみなどの症状が現われます。
心臓弁膜症の治療には、(1)薬物治療、(2)外科治療、(3)カテーテル的大動脈弁置換術などがあります。
血管を拡張させたり、血液をサラサラにして詰まりにくくしたりする薬を使う。
弁形成術とは、弁の一部に異常が限られている場合に、異常な部分だけを修復し、正常な部分を温存する手術です。
おもに僧帽弁、三尖弁に逆流がある場合に行われ、最近では大動脈弁にも行っています。
当院では僧帽弁閉鎖不全症(僧帽弁逆流)の形成術に積極的に取り組んでおり、前尖病変では90%、後尖病変では95%以上の割合で形成術が可能です。
逆流の再発も少なく成績は良好です。
人工弁を使用しないで治療ができますので、人工弁のトラブルが起こらず、ワーファリンという血液をサラサラにする強力な薬を飲む必要がありません。
病変が高度あるいは広範囲の場合には弁置換術を行っています。
65歳以上の高齢者の弁置換術では原則としてワーファリンが不要となる生体弁を使用しています。
手術は人工心肺装置を用いながら心臓を一時的に停止させて弁を修復または置換します。
手術後は集中治療室(CCU)に移り、専門訓練を受けた看護師が注意深く観察します。
退院の時期は心臓の状態や年齢等により違いますが、通常2~3週間で帰宅できます。
最近は、胸骨部分切開や肋間開胸などの小切開手術により、患者さんの負担軽減と、はやい社会復帰を図っています。
狭くなった弁にカテーテルで人工弁を植え込む治療。